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■ 診療内容

心臓血管外科において治療する疾患は先天性心疾患、後天性心疾患( 虚血性心疾患、心臓弁膜症)、および血管疾患(胸部大動脈から末梢動脈、および、静脈)です。 1 年間の心臓血管手術症例数は平均 300 例です。

心臓血管外科においては多くの手術で人工心肺と呼ばれる装置を用います。これは心臓や大血管手術の際に心臓と肺の替わりを請け負ってくれる装置で、この装置を用いることにより複雑な手術も可能となります。

心臓血管外科の手術は怖いというイメージがありますが、昔と違って随分と成績は良くなっています。現部長が着任してまだ 5 ヶ月ですが、いわゆる定期手術においてはこの5 ヶ月間(約100例)死亡例はありません。緊急手術をせざるを得ない症例(大動脈瘤破裂やショックに陥った心臓病等)においても好成績を収めています。心臓手術でも術後2-3日程度から歩行開始可能で、入院期間は特に合併症がなければ術後10日-3 週間くらいです。以下に各疾患別に治療、成績を紹介します。

1) 先天性心疾患

生まれつき心臓に異常がある病気で、心臓に穴があいていたり、弁の異常、発育不全があったり、また血管の位置異常等様々です。一般に人口の約1%で発生すると言われています。病気のため、チアノーゼ(皮膚が低酸素のため青くなる)や呼吸不全、発育不全等が生じます。心房中隔欠損症心室中隔欠損症はよくある疾患で、現在は小さな皮膚切開でも手術可能となっています。複雑心奇形では新生児からでも手術を行っています。当院の小児循環器センターと連携してカテーテル治療(バルーン形成術、コイル栓塞術)を手術症例に併せて行う事もあります。この病気のあるお子さんはまず、小児循環器医にて診断を下し、外科治療を含めた治療方針を決定しています。年間70例程度の手術を行っています。病気の重症度により手術リスクは大きく変わります。軽症の心房中隔欠損症では0.5% 以下、重症の複雑心奇形では20%を超えることもあります。

2) 虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、冠状動脈(心臓に栄養を与えている血管)が閉塞あるいは狭窄している疾患です。病名としては狭心症心筋梗塞が代表的です。狭心症の場合は、運動や食事、入浴等の労作時に胸の重苦しさ、痛みを感じます。

心筋梗塞はそれがさらに発展し、心臓の筋肉が一部壊死し、激しい痛みが長く続きます。冠状動脈の治療は薬物治療とカテーテルによる治療が進歩し、これらは循環器内科で治療します。カテーテル治療が不適当な症例(冠状動脈が堅い症例、多枝病変、心機能低下例) では冠動脈バイパス術の適応として外科で手術をします。心筋梗塞の合併症として左心室瘤僧帽弁閉鎖不全心室中隔穿孔を生じた場合も手術となります。高齢社会を迎え、この病気はますます増加しています。また、最近では人工心肺を使用せず、心臓が動いたままバイパス手術を行うオフポンプ冠動脈バイパス術も積極的に行っています。オフポンプで手術を行うことにより、高齢者における術後回復が促進され、これまで、禁忌とされていた重症例でも手術が可能となっています。年間60例くらいですが、最近増加しています。オフポンプで手術を行う症例は冠動脈バイパス術の6割から7割程度です。手術リスクは 1-2%程度です。

3) 心臓弁膜症

心臓には右心系と左心系に合わせて4つの弁があります。後天性心疾患では主に左心系の僧帽弁(左心房と左心室の間)と大動脈弁(左心室と大動脈の間)に異常が生じます。狭くなるのが狭窄症で、逆流を生じるのが閉鎖不全症です。 狭窄や閉鎖不全の程度によって心肥大となり、呼吸困難や浮腫を生じるようになります。心肥大があまり進行しない内に手術すれば術後は通常の日常生活が送れます。手術は自己の弁を温存する弁形成術と弁を代えてしまう弁置換術に分けられます。弁形成術では術後に抗凝固剤が不要となるので、弁置換に比べQOLにおいて優れています。特に僧帽弁閉鎖不全症においては現在は9割以上の確率で弁形成術が可能となっています。高齢者に多い大動脈弁狭窄症では生体弁を用いた弁置換術で好成績を収めています。また、比較的よく合併する心房細動に対し、不整脈手術(メイズ手術)も併せて行っています。弁膜症手術は年間50例くらい行っています。手術リスクは3%程度です。

4) 大動脈瘤手術

大動脈瘤は部位別に胸部と腹部に大別されます。また、病理的には真性大動脈瘤 ( 主に動脈硬化による動脈全体の拡大) と解離性大動脈瘤(血管内膜が裂けて血管全体が全長にわたって拡大、各臓器虚血や破裂を生じやすい)に分けられます。真性大動脈癌の手術適応の目安は胸部で6cm、腹部で5cmとしています。この大きさになると破裂のリスクが手術のリスクを大きく上回るからです。動脈瘤は破裂した場合の死亡率が高いので破裂予防の手術となります。

無症状の患者さんが多いので、手術を勧めにくいという性格があります。手術は瘤を切除し、人工血管で置換します。手術リスクは胸部で3-10%、腹部で1-2%程度、です。

解離性大動脈瘤は上行大動脈に解離が及んでいるA型解離では緊急手術が必要です。解離性の手術リスクは5-10%です。下行大動脈に限局する解離では内科的治療が優先されます。胸部大動脈瘤の年間症例数は20例、腹部大動脈瘤が60例くらいで、解離性動脈瘤は年間 20-25例です。

5) 末梢動脈手術

下肢の閉塞性疾患、として閉塞性動脈硬化症(ASO)とパージャー病があります。腹部大動脈以下の閉塞または狭窄のため、下肢に虚血症状が起こります。

下肢の間欠性破行(50-200m程度の歩行で下肢に疼痛が生じ、立ち止まると軽快)や安静時疼痛が主症状で、重症となると皮膚に潰瘍を生じます。薬物治療とカテーテル治療(バルーン形成やステント治療)があり、後者は放射線科で行っています。手術は人工血管でのバイパス術が中心となります。年間20-30例行っています。なお、バイパスできないような細い血管しかない場合、最近では血管新生療法という、血管新生因子を注射する方法があります。当院ではまだ、行っていませんが、関連施設をご紹介します。

6) 静脈疾患

下肢静脈瘤は下肢の表在静脈(大伏在静脈と小伏在静脈)の静脈弁の不全が起こり、立位になると表在静脈が怒張する疾患です。無症状も多いのですが、下肢の倦怠感、痛み、こむら返り、皮膚炎等の症状を訴える人もいます。瘤内に血栓を生じると血栓性静脈炎となり、相当の痛みを伴います。無症状では弾性ストッキング着用のみで経過をみてもいいのですが、瘤の大きな方、有症状の方には手術をお勧めします。外科的処置としては静脈瘤の形態により3種類の方法がとられます。もっとも軽症では硬化療法(硬化剤を瘤に注入して数日間圧迫のみ、外来治療)、中等症では結紮療法(弁逆流のある静脈を小切開で 結紮、外来治療)、および重症では瘤化した静脈瘤を抜去するストリッピング手術(入院治療)があります。年間100例程度行っています(外来中心。毎週水曜)。

深部静脈血栓症は大腿から腸骨静脈にかけて血栓を生じ、下肢の腫脹が主訴となります。血栓が肺へ飛ぶと肺塞栓症となり、呼吸困難から致命的になる場合もあります。近年、エコノミークラス症候群として注目されています。骨盤や大腿の手術後にも生じやすく、予防が大切です。血栓溶解療法、抗凝固療法が主体となりますが、急性期には血栓除去術も考慮されます。肺塞栓予防には下大静脈フィルターを植え込みます。

■その他
外来は月、水、金で、部長は水、金の午後診察しています。手術相談の患者さんはなるべく水、金にお願いします。心臓血管外科はその取り扱う疾患の性格上、緊急手術が多くなります。お急ぎの場合はご遠慮なく病院に電話してください。病院には24時間体制で心臓血管外科の医師が常駐しています。

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