当科で扱っている疾患の3分の2は悪性腫瘍(がん)の患者さんです。当院は奈良県に指定されたがん拠点病院であり、その治療は最も力を入れている分野の一つです。胃がん、大腸がん、食道がん、胆道がん、肝がん、膵がんなど多くのがんの治療を当科で行っています。
がんの治療には、外科的治療(手術)、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療、緩和治療などいろいろな方法があり、がんの進行状況、部位、患者さんの状態に応じて最も適した治療を選択することが重要になります(集学的治療)。
当科では、全ての消化器癌(食道・胃・大腸・肝・胆道・膵などの悪性疾患)の治療方針は、多くの医師(消化器内科や放射線科)との十分な討議の下に、学会で定められた【治療ガイドライン】に沿って治療を行っております。すべての治療方法については、患者さんに治療と危険性とについて十分に説明し、納得して受けていただいています。治療選択に迷われるようであれば、セカンドオピニオンを求めることもお勧めしています。
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<食道疾患の治療について>
食道癌の治療には抗がん剤や放射線治療、手術などいくつかの治療法があります。当院では初診時におこなった検査の結果を内科・外科・放射線科合同でおこなうカンファレンスで検討し、食道がん診療ガイドラインや日本臨床腫瘍研究グループの臨床研究の結果を踏まえ、もっとも適切な治療法の組み合わせを患者さんにおすすめしています。食道がんの手術では、首から胸、お腹にいたるまで取り除く範囲が広く、患者さんへの負担も大きくなります。当科では少しでも侵襲を少なくし、合併症が減少するように、術前から禁煙指導や呼吸リハビリを徹底し、術前治療の有無に関わらず胸腔鏡や腹腔鏡を用いた手術(内視鏡手術)を原則としておこなうよう努めています。平成21年には7名の患者さんに内視鏡手術をおこなっています。術後合併症は肺炎1名、反回神経麻痺1名であり、術後在院日数は19日(中央値)となっています。
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<胃がん診療について>
当院では年間約200症例の胃癌治療をおこなっています。そのうち外科での手術による治療は約140症例、内科での内視鏡による治療は約60症例です。初診時におこなう諸検査の後、消化器内科、放射線科、腹部一般外科の合同カンファレンスで治療前の癌の病状を把握し、胃癌治療ガイドラインに沿ってそれぞれの患者さんに適した治療方針を決定しています。早期胃癌には根治性を確保した上で低侵襲を目指し、胃全摘を含めた腹腔鏡下手術を行っています。また進行胃癌には開腹により十分なリンパ節郭清を行っています。特に再発の可能性が高くなるStageIII以上が疑われる患者さんに対しては術前化学療法を積極的に行い、その後に手術を行う方針をとっています。
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<大腸がん診療について>
当院では、年間約130例(結腸がん約90症例、直腸がん約40症例)の大腸癌手術を行っています。術式は患者さんへの侵襲の軽い腹腔鏡手術が主であり全体の約80%を占めています。治療方針の決定は毎週おこなう消化器内科・放射線科とのカンファレンスでおこない、大腸がん診療ガイドラインに則した治療をおこなっています。病気の進行度によっては外来化学療法室での抗癌剤治療を積極的におこなっています。術後は外来診察室での定期的な検査による再発の早期発見・早期治療を心がけており、大腸癌の術後成績(再発率・生存率)は他施設のデータと比較しても遜色ありません
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<肝臓疾患の治療について>
肝臓がん、胆嚢のう、胆管がんや転移性肝がんなどの悪性腫瘍と肝内結石などの良性疾患が肝切除の対象となります。これらの疾患の治療は手術以外にも様々な方法があり、私たちは内科や放射線科と共同で治療をおこなっています。手術は診療ガイドラインに基づいた治療を標準としており、年間約30例の手術をおこなっています。肝切除は創も大きく、身体への負担も大きくなります。そこで最近は腹腔鏡を用いた肝切除を積極的に導入し、身体への負担をできるだけ軽くする工夫をおこなっています。
<膵臓疾患の治療について>
膵臓がんや胆管がんなどの悪性腫瘍や良性腫瘍に対する膵手術は年間20症例です。これらの疾患の中で治療もそれぞれの診療ガイドラインに基づいておこなっています。がんは手術では十分な成績が得られませんので、退院後早急に化学療法をおこなうことにしています。
●患者さんに負担の少ない治療方法を目指して
近年の医学の進歩に伴い、患者さんにより負担の軽い治療(低侵襲治療)を選択してもらうことができるようになってきました。
その代表例が早期がんに対する内視鏡(カメラ)によるがんの切除(内視鏡的粘膜切除:右図)と腹腔鏡手術です。
内視鏡的粘膜切除は主に消化器内科によって行われ、早期の胃がん、大腸がんなどが対象になります。当院では消化器内科と定期的に会議を持ち、外科に手術目的に来られた患者さんでも、内視鏡で切除できる可能性があれば、手術より負担の軽い治療を受けていただけるようなシステムを作っています。
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それに伴い、近年では手術をする代わりに内視鏡的
切除を行われる患者さんの割合が増加してきています(手術症例数の推移)。
一方、腹部一般外科では、おもに外科治療(手術)を扱っています。手術方法の進歩に伴い、腹腔鏡手術が世の中でだんだんと広まってきていますが、当科でも2年ほど前から京都大学との協力により本格的に腹腔鏡手術を導入し、全国でも症例数は有数の病院となっております。腹腔鏡手術(右図)は、小さな傷をいくつかあけて、おなかを二酸化炭素で膨らませ、細い手術器具を用いて手術を行うもので、傷が小さいために患者さんの術後の疼痛が少ない、回復が早いという利点もありますし、以前に比べより繊細で出血量が少ない手術ができるようになっております。
一方で経験が必要な手術方法ですが、当科では豊富な症例数があり、技術水準を維持発展できるように日々精進しています。
当科では、おもに大腸がん、胃がん、食道がんに腹腔鏡(胸腔鏡)下手術を導入しています。
●クリニカルパスの導入について
胃切除、大腸切除、乳がん手術、腹腔鏡下胆のう摘出術などでは患者さんに手術前後の経過を理解しやすいようにクリニカルパスを導入しています。パスの例を図に示します。(もちろん、患者さんの状態によってはこの通りに行かない場合もあります。)
●化学療法について
がんの治療には化学療法(抗がん剤治療)が必要になることがあります。抗がん剤には、比較的投与方法が簡単な経口剤、また点滴で投与を行う薬剤があります。抗がん剤は以前は入院での投与しかできませんでしたが、最近では外来での投与が主になっています。
一般的に点滴投与の抗がん剤は治療効果が高いのですが、投与方法も煩雑で副作用も多く、当科では点滴抗がん剤の患者さんを一括して外来化学療法室にて薬剤の投与を行っています。
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